2016
05/30

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生活の質を測るケアノート

クオリティ・オブ・ライフは、主に重篤な疾患の治療後における生活の質を問う際の指標として用いられます。昨今ではさまざまな医療機関でこの考え方が導入されるようになったため、実際にこれに接したという人も少なくないでしょう。特に、外見や社会性に対して敏感な女性にとっては、疾患の治療後における生活の質の保障が大きな課題となるため、この指標を重視する人が増えてきています。
しかし、人の満足度や不満度という漠然とした概念を実際にどのように計測するのか、またクオリティ・オブ・ライフを計測するために厚生省が進める「ケアノート」がどのように作られてきたのかについては、あまり知られていません。まず、ケアノートは1994年に厚生省が行ったがん克服戦略研究事業で作成され、臨床での活用が繰り返されてきたという歴史があります。信頼性が認められ、現在はがん治療以外にも広く活用が推進されてきています。また、クオリティ・オブ・ライフの問診表は、一般的に身体性尺度・心理的尺度・活動性尺度・社会性尺度の四区分で計測されます。これに対してケアノートは、身体性尺度・心理的尺度については変わりありませんが、このほかは生活性尺度という観点を導入しています。この生活性尺度の中に、一般的な問診表で計測する活動性や社会性が心理的な概念とは別に併置された「こころ」という概念に即して計測されるようになっています。
このように治療後の生活の質を考慮する考え方やそれに伴う実践は、近年大きく発展を遂げてきたと言えます。